ホテル・デ・インデスは、1858年、ファン・ブリーネン男爵の市中邸宅として建てられました。ホテルになる以前は、ひとつの貴族の館だったのです。
当時の邸宅では、主人と使用人のあいだに、声を使わない合図の体系がありました。呼び鈴、扉の開き方、そして——羽。
意匠の由来 The Story
19世紀のハーグ。ある邸宅では、部屋の扉のノブに小さな穴が空いていました。そこに挿す羽の色で、使用人に合図を送っていたのです。
白い羽なら、入ってよい。赤い羽なら、入ってはならない。
In nineteenth-century The Hague, the door knobs of one residence had a small hole in the top. The colour of the feather placed in it told the servants whether they could enter.
ホテル・デ・インデスは、1858年、ファン・ブリーネン男爵の市中邸宅として建てられました。ホテルになる以前は、ひとつの貴族の館だったのです。
当時の邸宅では、主人と使用人のあいだに、声を使わない合図の体系がありました。呼び鈴、扉の開き方、そして——羽。
ドアノブの上部に空けられた小さな穴。そこに白い羽を挿せば入室してよく、赤い羽を挿せば入ってはならない。使用人は扉の前で、ノブを見るだけで判断できました。
会話を交わすことなく、しかし正確に意思が伝わる。羽一枚が、その役目を担っていたわけです。
この装置は、当時の暮らしの距離感をそのまま形にしたものだと言えます。
マイケル・バルナートの羽のブローチは、この逸話へのオマージュです。ホテル・デ・インデスの並外れた歴史に敬意を表した一点で、色はレッドとホワイトの2種類。
つまり2色あることには理由があります。どちらを選ぶかで、扉の前に立つ人へ送る合図が変わるわけです。
同じホテルを舞台にした作品として、アンナ・パヴロワに捧げられたバレリーナ・ブローチもあります。こちらは人物の物語、羽は建物と作法の物語です。
次に読む Continue