なぜ、ブローチなのか。 Why brooches?

マイケル・バルナートは、オランダのファッションデザイナーです。そのブランドが、なぜブローチのコレクションをつくっているのか。物語は、彼がずっと抱えてきたひとつの問いから始まります。

Michael Barnaart is a Dutch fashion designer. So why does his brand make brooches? The answer begins with a question he has carried for years.

01

「なぜ服は、毎シーズン
変わらなければいけないのか」
“Why does fashion have to change every season?”

リートフェルトの椅子や一枚の絵は生涯愛することができるのに、なぜファッションは毎シーズン変わらなければいけないのだろうか。

Why does fashion have to change every season, while a Rietveld chair or a work of art can be something you love for your entire life?

Michael Barnaart

デザインチェアは、何十年経っても古くさくなりません。一枚の絵は、生涯そばに置いておける。それなのに服だけが、季節がめぐるたびに「もう古い」とされてしまう。

マイケル・バルナートは、ファッションの一時性を超越した、象徴的なデザインに挑戦することを決意したのです。

A design chair does not age. A painting can stay with you for life. Yet clothing alone is declared out of date every few months. Michael Barnaart works on iconic design that transcends the temporality of fashion.

02

最初のコレクションは、紙でできていた The first collection was made of paper

2008年、アムステルダム・ファッションウィーク。彼が発表した最初のコレクションは、「紙」製の服でした。テーマは「儚さ」。着るほどに、文字どおり摩耗していく服。

デザイナー人生を歩み始めたときから、彼の主題はファッションと時間の関係だったのです。失われゆくものをテーマにしながら、失われないものを探究する。これが、ブランドに通底するフィロソフィーになっています。

その後、彼は生地としてのニットに夢中になります。グラフィックデザインを学んだ彼にとって、自分の想いのままにデザインすることのできるニットは、まるでキャンバスのような素材でした。

His 2008 debut at Amsterdam Fashion Week was made of paper, on the theme of transience — garments that literally wore away as you wore them. He later turned to knitwear, where he could build the fabric itself from his own graphics.

03

ブローチはドレスを彩るために生まれ、
そして不変性を備えた
Born to accompany the dresses, and given permanence

僕のドレスには、小ぶりで華奢なジュエリーが合わなかった。だから大ぶりのブローチをデザインすることにしたんです。それは同時に、グラフィックデザインへの情熱——おそらく初恋——を表現する手段でもありました。

Small, delicate jewellery didn’t work with my knitwear, so I decided to design chunky brooches instead. They also became a way to express my passion — and maybe first love — for graphic design.

Michael Barnaart

ブローチは、デザイナー自身がデザインした服に合わせるためのアイテムであると同時に、デザイナーとしての原点に帰る場所となったのです。

ここに、このブランドの核心があります。彼のデザイン哲学は「ファッションの一時性を超越する」こと。しかし、服である以上、季節性から完全には解放されません。彼の哲学を最も表現できるのが、ブローチだったのです。

The brooches were born as pieces to accompany the clothes he designed — and became the place where he returned to graphic design, his origin. His stated aim was to transcend the temporality of fashion. Clothing can never be entirely free of the season; the brooch is where that aim reaches furthest.

Clothing Brooch
時間Time シーズンがあるHas seasons シーズンがないHas none
込めたものIntent アートとファッションを繋ぐBridging art and fashion 変わらないものWhat does not change
かたちForm 素材とシルエットMaterial and silhouette グラフィックへの還元Reduction to graphics
持ち方Ownership 着るWorn 所有し、受け継ぐKept, and passed on
デン・ハーグのブティック。ブローチが合わせられたのは、こうしたニットとドレスだった
デン・ハーグのブティック。ブローチが合わせられたのは、こうしたニットとドレスだった
04

削ぎ落とした先に、本質が宿る What remains when everything else is stripped away

直線。原色。輪郭のはっきりした図形。デザインをする過程で、モチーフとなる造形や装飾を削ぎ落としていくと、そのモチーフが本来もっていた美しさが自ずから立ち上がってきます。

そして、そのモノ本来の造形美は、時を経ても古びず、どこにあっても通じます。不変であり、同時に普遍でもあるのです。

モチーフは絵画に限りません。ナポレオンの紋章だったミツバチ。熱気球への情熱を燃やしたモンゴルフィエ兄弟へのオマージュや、伝説のプリマ・バレリーナ、アンナ・パヴロワ。街の記憶、日常の風景、動物たち……。性格の異なるモチーフがデザイナーの手によって幾何学に還元され、そしてひとつのブランドとして表現されています。

こうして生まれたブローチコレクションは、時の流れのなかにあっても失われない不変性と、モチーフそれぞれの物語を同時に持ちます。彼の哲学は、このブローチで実現しているのです。

Straight lines, primary colours, clear outlines. Graphic design strips away ornament until only the form remains — and what does not wear the styling of its era cannot be left behind by it. Each brooch holds two things at once: a form that does not change, and the story of its motif. His idea of the timeless is realised here, in the brooch, more fully than in any garment.

05

一点ずつ、番号が入る Each piece is numbered

はじめは少量生産だったので、番号を振り始めました。

Because production was small, I started numbering them.

Michael Barnaart

シリアルナンバーは演出ではなく、少量生産を貫くという姿勢の結果です。大量につくらないから番号が振れる。番号が振れるから、その一点は「あなたのもの」になります。

同じデザインでも、あなたの手元にあるものは、たしかに世界に一点だけなのです。

Collection 日本での取扱 38型38 designs in Japan
Edition 少量生産・番号入りSmall batches, numbered
Price ¥8,800〜(税込)From ¥8,800 (incl. tax)
Packaging 専用オレンジBOXSignature orange box
裏面には、ブランド名と番号が刻まれる
裏面には、ブランド名と番号が刻まれる
06

1930年代から続く工房で In an atelier running since the 1930s

ニットを編んでいるのは、オランダの家族経営の工房です。創業は1930年代。川沿いを行く漁師たちのセーターを編んでいた女性が始め、その家族が受け継ぎ、近代化してきました。

オランダの遺産の、小さなひとかけらです。

A small piece of Dutch heritage.

Michael Barnaart

少量生産、伝統的な手法、環境と労働環境への配慮。速く、たくさんつくることを、このブランドは選びません。長く使われるものをつくるという姿勢は、つくり方そのものにも及んでいます。

07

語られることで、価値が増す Worth more for being talked about

単なる服やアクセサリーではなく、物語を感じてほしい。Conversation pieces——会話を生むものであってほしいんです。アートのことでも、好きな動物のことでも、その日の気分でもいい。そこから力を得る人さえいます。

I want people to feel these are not just clothes or accessories, but things that tell a story — conversation pieces. About art, about a favourite animal, about the mood of the day. Some people even draw strength from them.

Michael Barnaart

胸元のアートピースが、会話を生み出す。どれを選ぶかで、何を話したい人なのかが伝わる。身につけるほどに意味が増していくものを、このブランドはつくっています。

レザージャケットに《ひまわり》
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